地球の陸地の 30% は森林をはじめ、さまざま植物に覆われています。コンクリートジャングルに住んでいる人も、そうでない人も、私たちの暮らしは森林に支えられています。木や植物は、食品から紙、食器、家具、さらに医薬品に至るまでいろいろな製品に不可欠な材料です。しかし、1 秒間にサッカーコート 12 面分の森林が失われています。大量消費社会により森林が全て消えてしまったら、私たちの暮らしはどうなるのでしょうか? そして、そのような事態を食い止めるにはどうしたらいいのでしょうか?
森林は、陸上に生息する 80% 以上の動植物を育む非常に豊かな生態系を形成しています。そして、森林の上層部(林冠)から根元の下層部(林床)に至るまで、さまざまな動植物が適応して繁栄しながら“生命の網”を生み出しています。人間も例外ではありません。木材やゴム、木の実、果物、蜂蜜など、森林からさまざまな産物の恩恵にあずかっています。森林地帯には約 3 億人が暮らし、食糧や飼料、燃料といった資源以外にも、木工品や木彫品といった加工品で生計を立て、各地で独自の文化を生み出しています。森林は、気候を調節し、大気中の二酸化炭素を吸収、蓄積するという重要な役割も担っています。また、植物が水蒸気を放出する蒸散によって水の循環が促され、その水の蒸発で大気を冷やしてくれます。私たち人間が利用する淡水の約 75% は、森林に覆われた地帯が水源になっています。
森林の恩恵と機能は森林地帯の外にももたらされています。そのような森林が減少してしまったらどうなるでしょうか?
大切な森林がこのまま破壊されていくと、深刻な結果をもたらすでしょう。この瞬間にも木材の生産、農地や牧場、都市の開発のために木々が伐採されています。森林の減少は動植物の個体数の減少にもつながります。ジャイアントパンダやオランウータン、コンゴウインコ、ヤドクガエルといった動物たちの生息地が破壊され、脅威となるからです。科学者たちは新種を発見するために世界中の森林を調査していますが、その存在や生態系での役割を知られることなく絶滅してしまった動植物もいるかもしれません。森林破壊は、そこで暮らす民族の生活の糧や文化を奪うことにもなります。また、森林から得られる資源や生み出されるサービスにも影響が及べば、都市部の日常生活も脅かされます。気候変動が世界を悩ませている状況にあって二酸化炭素を吸収してくれる自然が最後の頼みの綱ともいえるのにもかかわらず、それを失っているのです。経済的な観点から見ると、世界で過去 10 年間に行われた森林破壊による損失額は数兆ドル規模となっています。例えばケニアでは、林業から得られる収益の 4 倍の費用が森林管理サービスに費やされています。
木を伐採するのにはそれほど時間がかかりませんが、成長するまでには何十年もかかります。このまま大量に消費し続けていけば、森林は消滅し、取り返しのつかない結果を招くでしょう。生態系が回復して定着するまで、私たちは十分な時間と適切な環境を与えてあげなければなりません。消費の習慣と資源の供給を持続可能なものにすることが非常に大切です。森林資源の消費を減らすために、Reduce(リデュース:ゴミを減らす)、Reuse(リユース:繰り返し使う)、Recycle(リサイクル:資源に再利用する)、Rethink(リシンク:もう一度考える)の「4R」を実践しましょう。また、FSCTM(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)の承認を受けた製品を選んで、責任ある企業や組織を応援しましょう。FSCTM は、責任ある森林管理を世界に普及させることを目的としている国際組織です。世界中に“持続可能性の種”をまいて、適切な環境をつくり、社会的な利益につなげ、経済的にも発展できる“緑豊かな森のような社会”を実現できるよう取り組んでいます。